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高校にも親睦目的の遠足ってあるんだな。行くのは一、二年だけらしいけど。
俺が教室でその遠足の旨の書いたプリントを配られたのは、サクヤにしばかれてから、もとい入学式から四日後だった。
少し遠くの山まで歩いていくらしい。めんどくさっ。
「ね、そーせき、楽しみだね遠足」
と、後ろから広岡が声を潜めて言った。
「だね」
もちろんそこで、俺は正直に意見を言ったりしない。正直は確かに大事だけども、正直すぎるのはただの間抜けだ。
適度の嘘は、必要なのである。
「…………はぁ」
サクヤが俺と広岡を睨んでいることに気づいて、ため息をつく。
見える箇所といえば二発目の下顎だけだったが、見た目にわからないくらいに、サクヤは的確に見えないところ、服に隠れている箇所をぼこぼこにしなさった。
DVの要領だな。
つまり、まだ結構俺の身体は痣だらけである。
「この遠足では用紙にも書いてあるとおりに四人一組の班で二年生と親睦を深めて貰います。班決めは先生がするので、あしからず」
と、俺たちの担任教師である晴己野 揃ハレコノ ソロエ先生が淡々と言い、生徒たちから班決めくらい自分達でしたいでーすと反論があがる。
……教室が喧噪に包まれて、そんな中俺が考えることはひとつ。
サクヤと一緒じゃありませんよーに。
絶対めんどくさいことになる。
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