冷厳の国

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「彼の事を話せば、あの事件が示し合わせであった事がバレてしまう恐れがあるでしょう?」 にやり、彼は笑った。 「それに、リフクレアの血が残っている訳がないのです。ハントは20年程前に死んだ。あの黒仮面の男は声が高かったですからね。年齢はおそらく10代、よくて20歳ちょっとくらいでしょう。その頃にハントが妊娠、出産をした事実はなかったはず。ナンセンスですよ、ありえない」 そして再び、怪しく笑う顔を、護衛の男に向ける。 「それ相応のリフクレアが、どこかにいれば、話は別ですが、ね」 言い終わると、さらにデイトは表情を変える。 本当にコロコロと。 今度は一転、厳しくなる。 「そういえば確か、あの仮面の男はエイハブを始末するためにグロスブルグに潜入するような事を匂わしていましたね……。本気かどうかはわかりませんが、うまくいけば、それでエイハブも始末できる訳だ。そして、南の総監はまだ若い。ドラクロスやバルティアなどはどうとでもなる。この分だと、フェルムランドがファビュールのトップに立つ日も近いようですね」 最終的に、デイトは笑みをこぼしている。 押し殺すような笑い声は、しばらく部屋に残ったままだった。
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