冷厳の国

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――― 夜は明けた。 今日でグロスブルグの都市部に到着して9回目の朝である。 赤い夜から一変、どんよりとした灰色の空が延々と続いているのだ。 やっぱり、街全体が暗い。 「空気がいや……」 ぽつりと呟いたレリアは、表情も険しかった。 なんだか、空気が汚れているように感じる。 本当にそうなのかはわからない。 だが、一度そう思ってしまうと不思議と身体が受けつけてくれなくなる。 そう、あれだ。 あの、遠くに見える鉄工所の煙突。 原因はきっと、そこから漏れる黒い煙なのだろう。 鉄工所から立ちのぼる煤煙が舞っているかのような、いやな空気がここにはあるのだ。 街も薄汚れている。 建物にスプレーを吹き掛けたようにいろんなところに黒っぽい染みがある。 木造の建物はほぼなく、大体、石のような灰色の硬い物質により造られているのを、レリアはそれに触れた時に感じた。 自然の暖かさはなく、形もシンプルかつシャープなものばかり。 まっすぐと凹凸のない、四角形をぐいと伸ばしたような見てくれだった。
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