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「まさか、フォーシュは1回きりじゃなかったなんてねえ……」
レティシアは感慨深げに言ったが、その後すぐに、少々表情を曇らせた。
それも僅かな時間で元の柔らかい表情に戻ったのだが、その一瞬をレリアは見てしまっていた。
では、彼女がなぜ、一瞬でもそんな表情をしたのか。
その理由も、レリアはよくわかっているつもりだった。
「魔力を大量に使うから、そういう先入観が生まれたのよ。きっと」
レリアは、彼女の表情の変化には気づかないふりをしてそう答えた。
フォーシュは1回きりではない。
レリアがそれに気づいたのは、1度目の祈りでレティシアを助け出した後だった。
もちろん、その時には彼女が本当に助かったのか――つまり元に戻ったのかはわかっていなかったのだが。
そして、それに気づいたのもまた、なにげなくだった。
ある意味、直感だ。
そう、またしても女の勘というやつだったのかもしれない。
フォーシュが発動し終わった後も、レリアの気持ちや状況や、あるいは感覚や周りの物音まで、そんなものに変化がまったくみられないように思えた。
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