プロローグ

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――― 時をほぼ同じくして、グロスブルグ南地区の某所では、4大国家のトップによる会議が行われていた。 バルティア、ドラクロス両国王。 フェルムランドの島長。 そして、グロスブルグ北地区、南地区それぞれを治める総監の5人である。 そうそうたる顔触れだ。 その5人は、丸く大きなテーブルに等間隔を開けて座っている。 テーブルの真ん中には、ファビュール全土を縮小した、ミニチュアの模型のようなものが設置してある。 そして、5人の椅子のすぐ後ろには、各国トップを護衛するために各人につき1人ずつの側近が佇んでいた。 「まずは、今回新たにグロスブルグ南地区の総監に任命されたベンハルト総監を紹介しよう」 初めに口を開いたのは、齢60をとうに越えている、グロスブルグ北地区の総監エイハブだった。 白髪頭に口髭、頬には刀でつけられたであろう切り傷の後がある。 その昔、軍に所属していた頃の古傷だ。 そこから彼は、今の立場までのし上がったのだった。 ブレトス時代から残る軍国主義の名残である。 そのエイハブから紹介を受けた南地区新総監のベンハルトは、憎たらしげに鼻を鳴らした。 「そんなものはけっこうですよ……」 声も、顔も、若い。 真っすぐな黒髪を持つ男。 若き総監の誕生だった。
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