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怜人はそれに動じなかった。
文句は頻繁に言っていたけれど、それでも距離をおこうとも、壁を作ろうともしなかった。
それどころか、徐々に徐々に近づいて来ていた。
レリア自身も気づかない程、徐々に徐々に。
そして気づいた時には、もうすでに隣にいたのだ。
「なんか、不思議……」
レリアが呟く横で、エレノアはくすくす笑っている。
まったく――。
なんだか話をして、逆に損をした気分になった。
「恋なんてそんなものよね」
あっけらかんとエレノアは言った。
そんなものなのかな、というのがレリアの正直な感想だった。
エレノアとは、人生経験の量が大きく違うのだ。
レリアよりも、10年も長く生きているエレノアが言うのだから、きっとそうなのだろう。
でも、確かに不思議な事ではあった。
いつから始まったかなんて、いまさら聞かれてももう思い出せないし、わからない。
それを思えば、そんなものという表現で大きくひとくくりにしてしまいたくもなる。
そういう事なのかもしれない。
「ま、とにかく。アイリスさんも言ってたけど、絶対無事で帰ってくるのよ」
任務の前のような、エレノアからの鼓舞である。
それが、しんみりとする時間はこれで終わりだと告げた。
エレノアがシンプルに無事を祈ってくれた事が、逆にレリアの心を軽くしてくれた。
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