3142人が本棚に入れています
本棚に追加
もっともありそうな、もっとも現実的な考えだけがすべてではないのだ。
「レリアさん、ありがと~」
ハーティはもう、すっかり大丈夫のようだった。
「いいわよ、そんなの。それに“さん”はもういらないわ。ほら、なんかよそよそしいでしょ?呼び捨てにしてくれていいから」
すると、ハーティは不思議そうな顔を少し傾けた。
それからほとんど間をおく事なく、今度はにっこりと笑った。
「ありがと~、レリア」
つられるように、レリアは自然と笑みをこぼした。
ハーティもまた、笑顔のうらっかわに、さまざまな思いを閉じ込めていたのだろう。
それは、リーサと同じだった。
たった3人の女性メンバーの1人として、そんな2人の心境に気づけなかったのは寂しい限りだが、それもまた過去の事だ。
変えられるのは――。
「ねえ、レリア~。グロスブルグに行ったら、リーサの事も探してみてくれないかな~」
ハーティは、聞き入れてもらえるかな、というふうな不安げな顔をして言った。
その心境はよくわかった。
そう簡単に全幅の信頼を置けるようになる程、人間は万能ではない。
人間関係は機械みたいに、オンとオフ、はいといいえ、だけでは語れないのはあたり前だ。
順々に、0から始まる関係を10まで持っていく。
1、2、3――と。
早い遅いはあれど、近道はないのである。
レリアは、微笑んで力強く頷いた。
こうして今、2人の関係は1つ上の数字を刻んだのだ。
最初のコメントを投稿しよう!