冷厳の国

6/54
3141人が本棚に入れています
本棚に追加
/1150ページ
切ない――切ない? いや、少し違う。 何て言えばいいだろう。 キュッと苦しい、落ち着かない気持ち。 それに焦燥感がある。 怜人に会ったら、何を言おう? レリアの脳裏にぼんやりとそんな思いが浮かんできた。 もし、会ったら、何をしよう? 会ったら、何をしてくれるんだろう? 笑ってくれるのかな? 手をとってくれるのかな? あわよくば、思いきり抱きしめられ――って、何を考えてるんだろう。 『おい。お前なんで、まくらを抱きしめているんだ?』 唐突に現実へ引き戻された。 湿気を多分に含んだ枕から、嫌な臭いまで香ってきた。 ため息が漏れる。 なんだか怒りまで湧いてきた。 「もうっ!うるさい!あんたは最悪最低よ」 とりあえず、定石通りにフェニックスを怒鳴っておいた。 八つ当たりは虚しい。 しかも当たりちらすべきフェニックスの姿は、どこにもないのだ。 誰もいない部屋に、レリアの声だけが響き渡る。 レリア1人しかいない部屋に。 「……それにしても。あんた、まだ姿を見せたことないわよね?声だって頭ん中だけだし」 自らの冷静さを取り戻そうと、あえて一言一句丁寧に、レリアは尋ねた。 そして、聞いておきながらレリアは少し後悔していた。 長い話が始まりそうな気配があったからだ。 レリアはまた少し、瞼が重たくなってきていた。 やっぱり疲れている。 『この狭さでは、ペンダントからは出られないが、声なら出せるぞ?』 フェニックスは、少し誇らしげに言う。
/1150ページ

最初のコメントを投稿しよう!