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読んでいた雑誌を閉じ、学生服の男は通学鞄にそれを仕舞う。
「今日も平和だ……」
(ほんの数年前の大事件も、今じゃ雑誌で陰謀説とか、面白半分な話題になるだけだ)
「ふわぁ……」
大きな欠伸に合わせて男は伸びをする。
「っと」
よそ見して歩いてた男は誰かの背中にぶつかった。
「あっ……すいません」
男が頭を一度下げて、振り向いた人と視線が合う。
赤い長髪の間から覗く鋭さのある碧眼に男は息を飲んだ。
「……ああ」
赤髪の男は一言だけ言うと先に歩いていった。
固く握り締めていた拳を解き男は後ろ姿を見送る。
「……制服は同じ……だったよな」
男は何気なく公園の時計を見て苦笑いした。
「やば……遅刻だっ!」
鞄を脇に抱えて男は走り出す。
走る男を待ち受けていたかのように、八百屋の前で女性が手を振る。
「おはよう光ちゃん、いつも元気ね」
「おばちゃんもね、それじゃ行ってきます!」
元気に手を振り、光ちゃんと呼ばれた男は学校に急いだ。
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