3251人が本棚に入れています
本棚に追加
夏休みに久しぶりに故郷に帰省した俺――桜 海斗は田舎の空気を吸い込み一息ついた。
「ふぅーー、やっと着いたああぁぁぁーー。新幹線三時間、電車二時間、バス三時間、徒歩五時間、合計十三時間ってなんだよ!朝早くに出たのにもう夕方だよ!」
海斗が実家の前で一人で田舎の理不尽に突っ込んでいると、海斗の後ろを何かが通った。
「こんな時間に人が?もう日も暮れるっていうのに」
海斗の故郷は周りを山に囲まれているので日が沈むのが早い、そのため数少ない村人達は日が沈む前に家へ帰っている。
不思議に思った海斗は道に戻り辺りを見渡した。
「今のはいったい……あ!」
夕日を背に受けて小柄な人影がこちらを見ていた。
「そこで何をしてるんだ?夜は危ないから早く帰りなさい」
海斗が声をかけると、人影は近づき海斗の服の袖を引っ張る。
「女の子かい?どうしたの?早くお家に帰ろうね」
海斗がそう促すと少女は少し離れて、
「ついてきて」
と言い歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!