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あの時のように
せめて皆に手紙が書きたかった。
でも
もう時間がないから
「ここでお別れだ」
私は去年と同じように
屋上の柵の外に足を置いた。
「待って」
「…え?」
振り返ると
息を切らした、彼がいた。
「1年、無視してごめん」
「…いいんだよ」
「本当は、お前ともっと話したかった、だけど…話したら、きっと、俺は…」
涙を浮かべながら、
彼はそっと私を見つめて
もう触れない腕に
そっと触れるようにした。
「…あの時は、気付いてやれなかった…ごめん…」
左腕の傷痕を彼は優しく撫でた。
「…いいんだよ。」
最後にちゃんとこうして
話したかったんだから。
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