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「言いたいこと、たくさんあったんだ」 「うん」 「お前と行きたかった場所だって、たくさんあった」 「うん」 「…お前と…もっと、一緒に居たかった…」 彼はそう言って、涙を流した。 私にはもう 彼の涙を拭うことすら出来ない 「時間だよ」 行かなきゃいけない もう此処にはいられない 「待ってくれ」 「もうタイムリミットだよ」 少しだけ笑ってみせた。 きっと、上手く笑えてない。 「私、本当に貴方が好きだった」 1年も、この世に縋りつく程に。 「行くなよ…っ」 「ありがとう」 「まだお前に言いたいこと…」 「…ごめんね」 「っ…」 そっと、彼の頬に触れた。 ただ私の手が、擦り抜けていくだけだった。 .
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