序章~THE DAY I WAS WAITING FOR~ずっとこの日を待っていた

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「……」  だが、その手の中には確かにあの青い板がある。シオンがマターボードと呼んでいた、あの板が。  不審な物を押しつけられてしまった。捨てようか、それとも持っていようかと逡巡し、結局後者を選ぶ。害があるとは思えないし邪魔になるほど大きなものでもない。掌よりやや大きいといったくらいだ。アイテムバッグの横のポケットに入れておけばいいだろう。  あのシオンという女性が言っていたことはわからないが、気になることだったのは確かだ。もう少し、この件に首を突っ込むことを決め、とりあえず修了試験で入手したアイテムを換金しに行く。  原生種やダーカーを倒した際に手に入る体の一部や、それらが持っていた物はアークスシップにおいて有用なものであり、任務の報酬以外でこうして収入を得るのはアークスとして常識となっている。そうしてそれなりに稼ぎがあるため、武器やユニット、医療施設の利用や回復剤などの任務に必要なものもすべてアークスの実費で遣り繰りしなければならないのである。  修了試験の報酬である、少ない額に加えて換金で得た金を緑色のキュープのホログラムが浮かぶ端末、倉庫に預け、少しロビー内を歩き、それなりに内部の構造が掴めるとその日は市街地へと帰省した。
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