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金髪の青年、アフィンが着ているのは黒を基調とした、軽量化を目的として作られた、開放感のある作りをしたデザインの服だ。肩や肘、内腿が露出したもので、ブリッツエースという名のその服は最近若年層に人気を博しているらしい。歳はさほど変わらないはずだが、黒髪の青年、ゼロスは歴としたアークス用戦闘服だ。黒を基調とし、随所に白が入っている。下半身がスカート状のセンシアスコートというその服は彼の所属するクラスとは違う、フォースに向いているものなのだが、フォトン励起を誘う特殊な素材が用いられていることに注目してこれを選んだのだ。
「それにしたって、ずいぶんと聞き心地のいいことしか言わないんだな。うそとまでは言わないけどよ……」
やれやれという風に首を振るアフィン。長く尖った、ニューマンの特徴である耳が揺れる。
「何のことだ?」
ゼロスは訝しげに眉をひそめ、それにアフィンは驚いた顔をする。
「何が、って。おいおい、忘れたのか。十年前にあったアレを」
詰め寄るように言い、
「いや……そうか。あれのことを忘れたいんだろ? うん、わかる、すっげーよくわかるよ。おれも忘れたいって何度も思ったし。よーし、わかった。これ以上は何も聞かないでおく! 細かいことは気にせずに、がんばろーぜ!」
何やら勝手に納得したようでそう締めくくる。
すると、話が終わった丁度いいタイミングで通信が入ってきた。
『転送座標の設定完了。アークスは順次、出撃して下さい』
「お、準備ができたみたいだな。初陣らしく、ぬるーい地域みたいだぜ? まあ、気楽に行こうぜ」
「ああ」
アフィンの言葉に頷き、ゼロスは背中に背負った己の武器を確かめると、パーティを組むことになった仲間と共に転送装置へ近づく。やや足元が沈んだ場所にたゆたう半透明な円状の床がそこにある。この中に飛び込めば、先の通信が言っていた設定された場所へ転送してもらえるのだ。
互いに頷き合い、ふたりは不安定に揺れる光が結集してできた水面のようなそこへ跳び込んだ。
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