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~A.P.238/2/20/10:30~
惑星に降り立ち、まず思ったことは、凄い、という単純なものだった。どこを見ても木々に覆われ、葉が茂り、太陽ではない恒星に照らされてさぞ光合成に忙しいだろう。それほどに緑一色な世界だった。まったく人の手が加えられていない、原初の姿を保った葉や木がそこらじゅうに蔓延っている。
「すげーなー、あっち向いてもこっち向いても緑だらけ。へへ、なんだかワクワクしてきたぜ」
ゼロスと同様の感想を抱いていたらしい。だが、どうやらアフィンのほうが好奇心旺盛でやんちゃ盛りの様だ。
「あまり気を急くなよ」
「とと、焦りすぎても駄目だよな。うん」
忠告を聞く程度には落ち着いているようだ。
「あ、そうそう。おれたち戦闘は初めてだし、基本的な動きとか練習させてもらえるみたいだぜ?」
そうか、とゼロスは答える。もっとも、十分に訓練を積んだ結果としてこのナベリウスに派遣されているのだ。
「必要ないだろう。そこまで手を抜いて訓練してきたわけじゃないんだ」
「ま、それもそうだな。よし、じゃあ進もうぜ」
アフィンが歩きだし、ゼロスもそれに続く。
本当に綺麗な緑の惑星だ。進めば進むほどにそう感じる。時折見る水たまりや沼地は、これまで見たことがないほどに澄み渡り、透明の中に青の絵の具を一滴垂らしたような、そんな印象を抱かせる色合いをしていた。遙か先に見える険峻な山脈には白いものが見える。どうやら高度の違いで温度差が発生しているらしく、積もった雪が溶けずに残っているらしい。だが、これだけの暖かい気候の中で、いかにアークスとはいえ肉眼でそれを確認できるほどの距離に雪山があるものだろうか?
「おっ、ありゃ原生種か? 元気だな」
アフィンの声に思考の渦から一度抜け、視線を前に向ける。するとなるほど、確かに猿のような生物が行く先にいた。ゼロスの胸辺りまである大猿だ。茶色と白の毛で覆われたその体には長い手があり、その先には非常に鋭そうな爪が窺える。何かを食べているらしく、しきりに口へと手を運んでいた。だが、
「……って、なんかこっちに来てねえ?」
そう、アフィンの言うとおり猿がふたりのもとへやって来ていた。その目はひどい威圧感を感じさせる。
「ど、どう見ても、仲良くしましょうって雰囲気じゃねえよなこれ! 相棒、やるしかないみたいだぞ!」
「みたいだな」
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