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彼も同じことを感じたらしい。腰の後ろに納めていた長銃、ライフルを構える。これはアークスとして活動することが決まった時にオラクルから支給されたものだ。当然、ゼロスにも支給された武器がある。
背に負った大剣、ソードを掴み、猿を睨みつけながら構えた。ふたりの様子から敵と認識したのだろう、猿の目が更に恐ろしい色を宿し、両手を地面について身体を後方に持ち上げた。
「っ、散れ!」
嫌な予感がし、アフィンに叫びながら横へ跳ぶ。ゼロスの声に反応したアフィンがゼロスと反対に跳ぶと、ふたりが今いた場所を猿が飛び抜けた。凄まじい速度だ。体当たりを喰らっていれば無事では済まなかっただろう。
「くっ……」
ゴクリと喉が鳴る。だが、倒さなければ倒される。ソードを握りしめ、敵へと走る。
「相棒!」
アフィンのライフルの連射が猿の動きを阻害する。このチャンスを逃さず、ゼロスは大剣を振り下ろした。フォトンが凝縮されてできた刃が猿を脳天から斬り裂く。
「はぁ、はぁ……」
息が乱れる。大した動きはしていない。だが、恐怖心がゼロスの体力を一気に削ったのだ。それはアフィンも同様で、荒い呼吸をしている。
「こ、こんなのがずっと続くのか……すごいな、先輩たちは……」
「たしかに。だが、俺達はこの世界で生きていくんだ。この程度で音を上げていられない」
ゼロスはソードを背に戻すと歩き出す。
「あ、待ってくれって!」
ライフルを腰に戻したアフィンは慌てるようにゼロスの後に続いた。
猿とによる初の戦闘。これまで積み重ねてきたオラクル内での模擬戦闘を思い出す。あの時の方がずっとつらく、大変だったはずだ。猿のほうが単調な動きで見切りやすく、攻撃を受けさえしなければひとりでも勝てる相手だろう。だが、これほどまでに疲労を覚えたのはなぜか。
死と隣り合わせの戦いだったからだ。これまでにない、敵意だけではなく殺意を持った敵との戦い。
(慣れないといけないな……)
いつまでもぬるま湯に浸かっていてはいつか命を落とすことになる。心に決め、鬱蒼と茂る叢を掻き分けて進む。
やや広い平地に出てふたりは周囲を警戒しながら進む。
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