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―永遠の闇、漆黒の少女、薔薇の香り
現実感がまるでない世界…
僕は…
「…ん…。」
目を覚まし、闇の中ではないことに安堵した。
小さなシャンデリアが光を灯している。
綺麗にされている白い部屋。
「…夢、か…。」
なんて怖い夢だったんだろう。
僕は死後の世界でさまよっていたのだ。逃れられない、闇の中で。
だけど、あの少女は誰だったのだろう。
漆黒の髪に、血のような紅い色をした目。
黒いフリルだらけのロリータに身を包んだ絶世の美女。
僕はベッドから下りて、大きな鏡を見た。
なんて表情をしているんだろう、僕は。
頼りなさげ、というかヘタレと言われかねない。
鏡の中の僕はなにかに怯えているようで、真っ黒な目は儚げに揺れている。
おろおろと、灰色の髪を撫でつけている。
鏡の向こうにいる、18歳くらいの、だけど幼い印象の少年。
「…これが、僕なんだ…。」
この呟きは僕を驚かせた。
あぁ、僕は記憶を失ったままだ。
だから僕は、僕を初めて見たような気がしたんだ。
じゃあ、あの闇の中にいたことも、夢ではないのだろうか?
僕はじっと考えを巡らせた。
(この部屋を抜ければ、ここがどこなのかわかるのかな?)
僕は部屋の扉を開け、部屋からとびだした。
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