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「ここよ。」 少女は大きな金色の扉を開けた。 大きなシャンデリアが飾られた広い部屋。 やはりここも白を貴重としており、綺麗で儚い印象を与えている。 豪華なテーブルが中央に配置され、テーブルには薔薇が飾られていた。 「どう?気に入った?」 少女はテーブルの中央に先ほどのブリオッシュと、席の前に紅茶の入ったカップ二つを置いて、席についた。 僕は少女の向かいの席につき、部屋の中を見回した。 どうせ目を覚ましたのなら、と僕はダイニングに連れてこられたのだ。 「あの…この世界は?」 僕は恐る恐る少女に聞いてみた。 「…え?」 少女は驚き、信じられないと言うような目で僕を眺めた。 少女の紅い目は、残酷な光をたたえている。 「あなた…まさか、わからないの?ここがどこか。」 少女はやがて唇を噛みしめた。 僕は、きっと聞いてはいけないことを聞いてしまったのだ。 僕がここを知らないわけがないのだろう。 だけど、僕は記憶を失っている。 だから、知りたい。 いや、知らなければならないように感じた。 「僕は、記憶を失ってるんだ。」 なんとか声を絞りだし、向かいの少女を見た。 どうか、教えてほしい。 少女の噛みしめた唇には血が滲んでいた。
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