1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここよ。」
少女は大きな金色の扉を開けた。
大きなシャンデリアが飾られた広い部屋。
やはりここも白を貴重としており、綺麗で儚い印象を与えている。
豪華なテーブルが中央に配置され、テーブルには薔薇が飾られていた。
「どう?気に入った?」
少女はテーブルの中央に先ほどのブリオッシュと、席の前に紅茶の入ったカップ二つを置いて、席についた。
僕は少女の向かいの席につき、部屋の中を見回した。
どうせ目を覚ましたのなら、と僕はダイニングに連れてこられたのだ。
「あの…この世界は?」
僕は恐る恐る少女に聞いてみた。
「…え?」
少女は驚き、信じられないと言うような目で僕を眺めた。
少女の紅い目は、残酷な光をたたえている。
「あなた…まさか、わからないの?ここがどこか。」
少女はやがて唇を噛みしめた。
僕は、きっと聞いてはいけないことを聞いてしまったのだ。
僕がここを知らないわけがないのだろう。
だけど、僕は記憶を失っている。
だから、知りたい。
いや、知らなければならないように感じた。
「僕は、記憶を失ってるんだ。」
なんとか声を絞りだし、向かいの少女を見た。
どうか、教えてほしい。
少女の噛みしめた唇には血が滲んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!