1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…いいわ、教えてあげる。」
少女は純白のカーテンに近づいて、カーテンを一気に開けた。
「…ここは、夜の世界。闇に包まれた、残酷な世界。」
少女はガラスの向こうを眺めながら言った。
紅い月が闇に輝いてた。
僕がこの世界で初めて月を見たころのままだ。
大きなガラスだが、見えるのは月と闇ばかりで、あとは廃虚のような教会が佇んでいるだけだった。
「…終焉が、近づいてる。」
少女は小さな声で言った。
僕は終焉という響きに、切なさを感じていた。
「…終焉?どういう…こと?」
僕は少女に聞いた。
だけど少女は僕の声など聞こえていないかのように、ガラスの向こうの闇を見つめたままだ。
「…見たでしょ?永遠の闇に呑まれる世界を。」
やがて少女はこれだけ言った。
きっと、僕たちにせまってきた闇のことを言っているのだろう。
あの永遠の闇からは逃げられないことは僕も知っていた。
いつか、この世界全てがあの闇にのまれてしまう。
少女はこのことを恐れているのだ。
最初のコメントを投稿しよう!