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「…ねぇ、名前教えて?」
僕は少女の名前を知らないことに気がついた。
紅茶をのんでいた少女は驚いたようにカップを置いた。
「…あぁ、記憶を失ってるんだものね。」
少女は暗めの声で囁き、手で黒い髪をいじった。
「私は、ロゼ。ロゼ・ホワイト。」
ロゼ、と僕は心の中で何度も言った。
僕はこの少女を知っていたに違いない。
だけど、名前を聞いても、記憶は甦ることはないようだった。
「あの…ここって城だよね?ロゼって…。」
いろいろ聞いてしまうのは失礼だとわかっていたが、聞きたいことはいっぱいあり、やめられなかった。
「この城は、純白を愛したあの人の為の城よ。だけど、あの人は死んだわ。私はこの城を譲ってもらったの。」
ロゼは感情のこもっていない声で告げた。
「似合わないでしょう?私に白なんて。」
あの人とは誰だろう?
考えてもわかるわけがない。
僕はただ話を聞いていることしかできなかった。
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