7/9
前へ
/41ページ
次へ
「…ねぇ、名前教えて?」 僕は少女の名前を知らないことに気がついた。 紅茶をのんでいた少女は驚いたようにカップを置いた。 「…あぁ、記憶を失ってるんだものね。」 少女は暗めの声で囁き、手で黒い髪をいじった。 「私は、ロゼ。ロゼ・ホワイト。」 ロゼ、と僕は心の中で何度も言った。 僕はこの少女を知っていたに違いない。 だけど、名前を聞いても、記憶は甦ることはないようだった。 「あの…ここって城だよね?ロゼって…。」 いろいろ聞いてしまうのは失礼だとわかっていたが、聞きたいことはいっぱいあり、やめられなかった。 「この城は、純白を愛したあの人の為の城よ。だけど、あの人は死んだわ。私はこの城を譲ってもらったの。」 ロゼは感情のこもっていない声で告げた。 「似合わないでしょう?私に白なんて。」 あの人とは誰だろう? 考えてもわかるわけがない。 僕はただ話を聞いていることしかできなかった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加