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あぁ、何か言わなきゃ…。
僕はシオンだって、教えなきゃ…。
なのに、僕は恐怖に支配されてしまっていて、声などだせなかった。
蝋燭の焔が消えて、ホールは闇に包まれる。
「…ひっ…。」
恐怖でしかなかった。
闇の中、ロゼの血の色の目だけが、光をたたえていた。
紅い目は細められている。
―まさか、微笑んでいる…?
この状況に、ロゼはうっとりとしているのだ。
「…いらっしゃい。私を殺さなければならないのでしょう?」
ロゼの声は甘みを帯びていた。
(ど…どうしよう…。)
このままじゃ、ロゼに殺されてしまう。
だけど、恐怖で僕はどうすることもできないなんて…。
―と、ロゼの紅い目がいつの間にか目の前にあった。
「わぁあっ!」
僕はお馬鹿な声で叫んで、後ろにころんだ。
しりもちをつき、僕はじんじんと痛むお尻を撫でた。
…あれ?声が、でた…。
「この声…シオン…?」
ロゼは驚いたように言った。
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