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―ここは、どこだ…? ただ、黒い闇が広がっていた。 黒い世界…なにもかもが闇につつまれた世界だ。 なぜ、僕はこんなところにいるんだろう? …あぁ、だめだ。 僕は、何一つとして覚えていなかった。 「…僕は…誰だ…?」 小さな呟きは、一瞬で闇に呑まれていった。 僕は誰なんだろう…。名前さえ覚えていない。 なぜ僕はここにいるのだろう。ここはどこなのだろう。 じっと考えて、一つひらめいたことがあった。 ここは、死後の世界なのだろうか? だとしたら、僕は死んで、生きていたころの記憶を失ったことになるから、ありえない話ではないのかもしれない。 だけど…こんな怖い闇にいるのはなぜだ? ここはただの暗闇ではない。虚ろで、呪われたような闇だ。さながら…人の心の闇の中のような…。 僕は生きていたころに罪でも犯してしまったのだろうか? 記憶を失ってしまったからには真実はわからないけど…。 でも、このままここがいったいどこかもわからない闇の中にはいたくない。 できることなら逃げてしまいたい。 僕は前の見えない闇の中を歩きだした。
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