3/9
前へ
/41ページ
次へ
どこかにぶつかってしまわないように、僕はゆっくりと歩いていた。 前の見えない中ではかなり怖い。 だけど、どこにもぶつかることはなかった。 ここは、永遠の闇でできているのだろうか? どこまで行っても、闇からは逃れられないのだと、僕は絶望し始めていた。 「…あ…れ?」 僕は一瞬歩みをとめた。 …薔薇の…だけどなぜか甘ったるいような香りがした。 こんな香り…いったいどこから…? 僕は香りを頼りに、また歩きだした。 「…っ。」 歩けば歩くほど、どんどん香りは強いものになる。 なぜか、僕の心を締め付ける香り。 懐かしいような、香り。 僕はこの香りを知っていたような気がした。 この香りの先に行けば…何かを思いだせるのだろうか…。 「…!」 気がつけば、行きどまりだった。 僕の歩みは、壁らしきものに遮られてしまった。 なのに、薔薇の香りは壁の奥からただよっているようだった。 …行けるのだろうか?この奥に…。 「…扉…?」 壁を調べていると、金属らしきノブにさわった。 この奥に…なにかがある。 僕はノブをゆっくりと回し、扉を開いた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加