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ガチャ―――――――
楽屋のドアを開けると、そこには向こうをみて座っている綾部がいた。
「なぁ、綾部。」
・・・返事がない。
「綾部。」
もう一度呼んでも返事がない。
見ると、綾部はイヤホンをしていた。
曲を聴いているのか。
「おい、綾部。」
近くに寄り肩を叩くと、綾部は驚いて振り向いた。
えっ・・・泣いてる?
綾部は俺に気づくと、急いで袖で涙を拭った。
「ど、どうした、またきち?」
「どうした、って、お前、泣いて・・・」
「あ、あぁ、これか?
・・・いや、この前ピカルに東方神起が出てくれたじゃん。
そのときに頂いたアルバムを聴いてたらさ、なんか、泣けちゃって・・・。
『Duet』って曲なんだけどさ、すごくいい曲だよ、これ。」
曲聴いて泣くなんて、俺も老けたかなぁ・・・、なんて
自嘲気味に笑いながら、綾部は荷物をまとめていた。
「じゃあ俺、先に帰るから。」
綾部はバタバタと楽屋を出て行った。
・・・・・・なんかおかしい。
綾部が曲を聴いて泣く姿なんて初めて見た。
もともと、そんなすぐに感動して泣くようなヤツじゃない。
僕は帰る準備をしながら、妙な違和感を覚えていた。
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