Not Reach ~M・T目線~

3/7
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ガチャ――――――― 楽屋のドアを開けると、そこには向こうをみて座っている綾部がいた。 「なぁ、綾部。」 ・・・返事がない。 「綾部。」 もう一度呼んでも返事がない。 見ると、綾部はイヤホンをしていた。 曲を聴いているのか。 「おい、綾部。」 近くに寄り肩を叩くと、綾部は驚いて振り向いた。 えっ・・・泣いてる? 綾部は俺に気づくと、急いで袖で涙を拭った。 「ど、どうした、またきち?」 「どうした、って、お前、泣いて・・・」 「あ、あぁ、これか? ・・・いや、この前ピカルに東方神起が出てくれたじゃん。 そのときに頂いたアルバムを聴いてたらさ、なんか、泣けちゃって・・・。 『Duet』って曲なんだけどさ、すごくいい曲だよ、これ。」 曲聴いて泣くなんて、俺も老けたかなぁ・・・、なんて 自嘲気味に笑いながら、綾部は荷物をまとめていた。 「じゃあ俺、先に帰るから。」 綾部はバタバタと楽屋を出て行った。 ・・・・・・なんかおかしい。 綾部が曲を聴いて泣く姿なんて初めて見た。 もともと、そんなすぐに感動して泣くようなヤツじゃない。 僕は帰る準備をしながら、妙な違和感を覚えていた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!