第一章 はじまり、はじまり

5/19
前へ
/33ページ
次へ
産まれたのはこの村だけど、私の故郷はシラルディア国。 いつかシラルディア国を、ここの皆で復興させたい。 お母さんが話してくれた、私達の故郷を。 国は滅びても、シラルディアの血は受け継がれる。 何年かかってでも、必ず。         * 私の家はパン屋。 お母さんと私で切り盛りしている。 なかなか人気のお店だ。 「リリスティ、ちょっといーい?」 お母さんの声が厨房の方から聞こえてきた。 私はパンをさっさと並べて、トレーを持ってお母さんの元へと急いだ。 「何?お母さん」 「おばあちゃんの家に、パンを届けてもらえる? 昨日電話があったの、すっかり忘れてて」 「分かった、良いよ」 じゃあこれ、よろしくね、と焼きたてのパンが入ったバスケットを手渡された。 ふわっ、とパンの香りが鼻をくすぐる。 私は店のエプロンをハンガーに掛けて、 「行ってきまーす」 森に住むおばあちゃんの家へと向かった。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加