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おばあちゃんの家は、村から少し離れた森の奥にある。
おばあちゃんはとても優秀な薬剤師で、王国の中心にあるカルハト城から薬の依頼が来ることも少なくは無い。
高齢であるし、城に住んではどうかという話も出ていた。
けどおばあちゃんは、森の方が良い薬草が手に入ると言って断ってしまった。
何だか本当に、おばあちゃんらしいな。
ふふっと笑って、私はいつもの道を、景色を楽しみながら歩いていった。
――だから私は気が付かなかった。
背後からゆっくりと忍び寄る、獣の存在に。
「……みーつけた…」
「おばあちゃーん!」
家の扉を叩くが、出てこない。
留守みたいだ。
……きっと薬草を取りにいったんだろうな。
私はスカートのポケットから鍵を取り出して、慣れた手つきで扉を開けた。
立て付けの悪い扉が、ギシッと嫌な音を立てる。
その瞬間、もわっと匂う薬の独特な匂い。
昔、風邪をひいた時におばあちゃん特製の苦い薬を飲まされた事を思い出し、ぶるっと身震いした。
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