第一章 はじまり、はじまり

7/19
前へ
/33ページ
次へ
私は奥にあるキッチンへと向かい、テーブルの上にパンの入ったバスケットを置いた。 キッチンは薬草の匂いがしないから、幾分か過ごしやすい。 綺麗に整頓されているし、シチューの香りがする。 「うー……すごく食べたい。 けど、早く帰ってお店の手伝いしなきゃ!」 後ろ髪を引かれる思いで、おばあちゃんの家を後にした。 早足で村へと向かう。 木々達がざわざわと揺れて、少し不気味な雰囲気を漂わせている。 私はここで、森の異変に気付いた。 「……鳥達が、いない?」 おばあちゃんの家に向かっている途中では、感じなかった違和感。 鳥だけじゃない。 木の枝を歩くリス、草を掻き分けて走るウサギがいない。 ……ガサガサッ 「!?」 突如、前方の茂みからガサガサと物音がした。 恐怖から、無意識にごくりと喉が鳴る。 何かいる……! そう思った私は、スカートの裾に隠し持っていたナイフを取り出して構えた。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加