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「…けど、一理あるかな…?」
完全に四面楚歌の状態になりかけた幸平に、意外な助け船が入った。幸平は驚きと期待に、朝義は心底面倒臭そうに眉間にしわを寄せて、その相手を見る。
「三郷さん、どうゆうこと?」
「名乗りとかポーズとか、そうゆうの決めとくって、これから戦うぞ!って気持ちを鼓舞するのにいいんじゃねえ?」
「ほんと!?」
「三郷…!」
日向の問いに答えた三郷の発言に、旗色の悪くなっていた所に肯定的な言葉が出ると思っていなかった幸平は途端に表情を輝かせ、朝義は面倒なことになりそうな予感が的中して顔をしかめた。
「でも三郷さん、あたし、朝義さんの言うことの方がもっともだと思うけど…」
「いやいや、俺も朝義の意見の方が正しいと思うよ?」
控えめというよりは、どこか呆れた様子で意見する日向に三郷は即答した。敵が名乗りを待ってくれるとは、流石に三郷も思っていない。
「けど、まあ…そうゆうの考えるぐらいは、モチベーション上げる為にしてもいいかなって思ってさ。」
「………三郷、建前は分かった。本音は何だ?」
機嫌が底辺まで落ちてきている朝義が唸るように問いかける。三郷は若干バツが悪そうな、引きつった苦笑を漏らした。
「いやあ、二人が変身ポーズ取ったらかっこいいだろうなあって。」
「付き合いきれん。」
「あああああ!待て待て待て待て!!」
盛大に眉間にしわを寄せた朝義が言い捨てながら立ち上がるのを、三郷は慌てて押し留めた。それだけで人を射殺せそうな視線を受けつつ、親友を宥めにかかる。
「いや、確かに本音はそうだけど、比重は建前の方がちゃんっと大きいぞ?!」
「どうだか。」
「幸平も変身ポーズほしいよな?」
「うん!あと必殺技も!」
「……………」
「…朝義さん大丈夫。くっだらねえって思ってるの、朝義さんだけじゃないから。」
疲れ切った様子で片手で目元を覆って座り込んでしまった朝義に、日向が乾いた声でフォローの言葉を投げた。大和田に至っては、話題のきっかけを作ったにもかかわらず、既に話の輪の中から抜けて自分の仕事に戻っている。
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