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「え、何じっちゃん?」
「店でそんな辛気臭い顔されたら、客が寄ってこなくなるじゃろうが。何を考えとるのかは知らんが、一人で解決できんのなら誰かに話して、とっととどうにかしろ。」
「うわー…流石ゆきじさん、年の功。」
「何か言ったか三郷?」
「いーえ何にも!」
誰もが言うのを躊躇ったことを、あっさり言い放った大和田に思わず呟くと、じろりと睨まれて三郷は慌てて視線を逸らした。
「え…俺、そんな辛気臭い顔してた?」
そして、言われた当の幸平は、言われて初めて自分が顔をしかめていたのに気付いたようで、きょとんとした面持ちで自身の顔を撫でる。
「朝からずっとだ。」
「そうだったの?」
「自覚がなかったのか…」
意外そうな幸平の反応に、朝義は呆れたようなため息をついた。日向や三郷や大和田も似たような面持ちで幸平を見ていて、視線に気づいた幸平はバツが悪そうに持っていたトレーを抱えてうつむいた。
「ごめん…」
「で?結局何をそんなに悩んどったんじゃ?」
大和田の問いかけに、幸平はまた難しげな顔をして黙り込んだ。答えたくないわけではなさそうなので、適当な言葉を探しているのだろう。
「……うん、やっぱり、そうだ…」
やがて、自分の中で思考や言葉がまとまったのか、幸平は顔を上げて朝義を見た。
「あのね朝義、俺、ずっと思ってたことがあるんだ。」
「…何だ?」
自分に話が振られることをあまり予測していなかった朝義は、内心身構えつつもどこか真剣な表情を見せる幸平に聞き返す。
「…俺達…」
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