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木陰で一息ついたとき、肩にかけたバッグの中で携帯がふるえた。
もう、何度めのころだろう。
この携帯がふるえるのも、このふるえを無視するのも。
「どうして・・・」
つぶやいて携帯を取り出し、受信メールを確認する。
「どこにいるの?!お願いだから連絡して!」
そんな似たようなメールが、もう何件も届いている。
心配させてる、分かっている。
だけど私は帰れない。
無造作に、携帯をバッグの中へぐっと押しこんだ。
「ごめんなさい」
優しい風が頬をなでると、自然に涙がこぼれおちた。
ふと、鼻をくすぐる潮の香り。
その香りに促されるようにして、私は足を動かしていた。
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