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たった一人になってしまったこの部屋。
僕はゆっくりと静かに見渡した。
婆ちゃんの面影と、香りを残したたった一つの僕の家。流し台の前でせっせと働く婆ちゃんの、夕日に照らされた背は、今思えば小学生の僕を守り育てる、強い背中だったんだ。
もう一度だけ目を閉じると、僕は強く息を吸って、立ち上がった。
このたった一つの居場所にさよならして、僕は明日、別の場所へと移り住む。共に歩んでくれる、彼女とともに。そして、今度は僕が、彼女の中の新しい命を守り育てる、強い背中になる為に・・・。
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