6人が本棚に入れています
本棚に追加
全てのことの始まりは数日前に遡る
『拝啓 フェンネル国王様
今宵、姫を頂きに参ります
魔王』
国王の元に送られた、たったそれだけの簡素な手紙
誰もが悪戯だと思い、配置されたのは形だけのハリボテ警備だった
……何せ、一番重要な筈の姫様の警護を僕――フェンネル軍後方支援部隊副隊長補佐という微妙な役職に任せる程だ。自分で言うことじゃないけどさ
まあその時は僕自身も悪戯だと思ってたから、とんだとばっちりを食ったもんだ、と文句を言うぐらいだったけれど
「……何、欠伸してるのよ
これから魔王が来るというのに……呑気な男ね」
信じていたのは当の本人、アニス姫のみ
しかしこの通り恐れる様子も取り乱す様子もないばかりか
「いい?バニラ
先程も言った通り、魔王がやって来たら必ず私を呼びなさいよ?
間違っても追い返そうなんて思わないで
私は魔王に捕われるのを心待ちにしているのだから」
……まさかの拉致願望だ
因みに理由を聞いたら「囚われの身なら働かずに済むじゃない」と残念なニート精神剥き出しの回答が返ってきたのはまた後日の話
最初のコメントを投稿しよう!