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そして、刻一刻と時間は過ぎて行く
今宵、とあったにも関わらず既に空がほんのりと白み始めた
その時だった
「……ふぅ、やっと着いた」
「!」
突如として響く声
しかし姿などはどこにも見受けられず、ダラけきっていた僕の背を正した
「えー……コホン
約束通り、お迎えに上がりました……アニス姫」
そして明らかに取り繕った気品を漂わせたその言葉とともに僕らの目の前に魔族の青年――魔王タイムが現れた
「なっ……」
「にしても広いなこの城……少なくとも三回は道に迷ったぞ?
人間とは地理に強い種族なのだな」
僕が驚愕している間にも魔王はスラスラと事を進めていく
既に彼と姫までの間は数メートル
「そう言う魔族は随分と約束の時を違える種族なのね
あまりに遅いからもう来ないのかと思った程よ?」
姫様が自ら魔王へと歩み寄る
一瞬呆気にとられた顔をする魔王だが、すぐにその表情を不敵な笑みに変え、アニス姫に恭しく手を差し出す
……そこで、僕は自分の職務を思い出した
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