序章

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コロコルム砂漠の外れ。 霊峰エストゥルに連なる山岳地帯に『アトマの街』はある。 古くから交易の拠点として発展した街であり、ダサーンとの境界線に近い事もあり、重要な軍事拠点である。 この街を遠く見下ろす小高い丘、一般には(紅狼の丘)と呼ばれる一角に、白い絨毯を敷いた様に見える場所がある。 その正体は花。 わずかに青みを帯びた白い可憐な花『アリシェラル』に埋もれる様に、その石碑はあった。 それはあまりに小さく、その存在を知らなければ、例え近くを通ったとしても、気付く者は稀だろう。 ましてや、その石碑が何を記しているかを知る者は少ない。 その石碑はアトマの街を、今日も静かに見下ろしていた。
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