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その鮮やかな色彩が、律動的に動く白一色の背景に映えていた。
その身のこなし。
なるほどなかなかに優秀な戦士らしい。
実戦部隊、特に人間の傭兵部隊の指揮官に第一に求められる資質。
それは『勇敢で強い』事だ。
少なくとも統率する部隊の誰よりも。
頭働きが不要という訳ではないが、何かと過酷な局面に投入されがちな傭兵部隊では、まずは『勇敢で強い』事が求められる。
つまりそれは、部下にのみ危険を押し付けず、率先して戦うと言うことだ。
それが出来なければ部下の信頼など得られない。
グラビスが知る限りそういうタイプは、人間であろうとメタポタミアンであっても、ある種独特な雰囲気という物がある。
ところが『面白い人間』には、微塵も感じられないのだ。
とても『偉大な』記録を更新中とは思えなかった。
メタポタミアン相手に対戦して『十九戦無敗』
これが現在更新中の記録である。
全勝ではない。
対戦成績『0勝0敗』
全ての対戦が引き分けである。
グラビスが最初に、この話を聞いた時、メタポタミアン側が手を抜いているか、経験の浅い新兵が、老獪な傭兵にからかわれたのだろうと思った。
しかし、そのメンツを聞いたグラビスは考えを改めた。
そのほとんどはグラビスも見知った者で相応の技量の持ち主だ。
対戦において、相手が誰であっても手を抜くような連中ではなかった。
そのメンツが勝てないとは、如何なる戦い方なのか?
好奇心にかられ、わざわざ修練所に足を運んだ。
そして、そこで目にしたのは、更に好奇心を掻き立てる存在だった。
「面白い!!」
グラビスは手摺を飛び越え、階下へと身を踊らせていた。
「おい?グラビス?!」
慌てたケスターの声を背にグラビスは『面白い人間』に近づいていった。
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