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【2016年6月末 エジプト・カイロ郊外】
遠くにギザのピラミッドが見える砂埃舞う路地を、必死の形相を浮かべ走る三人の男の姿がある。
「はあッ・・・はあッ・・・」
「くそッ・・・逃げろ」
「みんな・・・殺られちまった」
男達が砂煙を上げ何かから逃げる中、後方から等間隔で軋む金属音を轟かせ、男達へと着実に何かが近付いていた。
「!?」
「もう追い付きやがったのか?」
男達は、その何かから必死で逃げるものの、必死の逃走も虚しく得体の知れない何かから逃れる事は不可能だと、一人の男が足を止めた。
「このまま逃げても追い付かれて殺されるだけだッ!
俺は・・・仲間の仇を討つ」
男は叫ぶ様に仲間へ告げ、後方から迫り来る何かを睨み据えた。
「よせッ、アフムンド。
俺達には倒せない」
「無駄死にするだけだッ!
早く逃げるぞ」
必死で呼び掛ける仲間の声に耳を貸す事も無く、アフムンドと呼ばれた男は肩にぶら下げているRPG7(携行型ロケット砲)を構えた。
「お前達は早く逃げろッ!
あの化け物は俺が・・・」
アフムンドが仲間へ告げ終える前に、耳をつんざく様な高速の炸裂音が発生したかと思うと、アフムンドは夥しい弾丸の暴威に身体中を引き千切られ、3秒と掛からずに肉片すら残らない血煙と化しその命を終えた。
「アフムンド・・・」
「ちくしょうが!」
仲間が血煙と化し目の前で散った事に愕然とした二人は、嵐の様に夥しい弾丸を吐き出した何かを凝視する。
キャタピラ音を響かせ、近付いて来るそれは戦車であったが、本来砲塔があるべき部分には人型ロボットが鎮座している。
人間の頭部に当たる部分には、ガラスの様なカバーで覆われた巨大なカメラが据え付けられていた。
無機質な瞳にも思えるカメラが怯え慌てる男達を捉え、獲物を見つけたかの様に光を放った。
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