転機

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「いや、昨日はごめんね。」 社員達が昼食をとり終えて自分のデスクに戻る頃。 来客の関係で仕事が押し、少し遅めのお昼にありつく為に社員食堂に来ていた。 バツの悪そうに謝る先輩に思いっきりクエスチョンマークを浮かべた顔で答える。 「いや、柚季穂の話聞くつもりが私が話しちゃったから。」 「あぁ。私から聞いたのに謝らないでくださいよー。」 今日の日替わりメニューのメインのエビチリを一つ口に放り込む。 「で、なんだっけ?そろそろ新しい男が欲しくなったんだっけ?」 相変わらず、ここの社食の中華は特に美味しいなあと軽く感動していると、南野先輩が含んだ笑みを浮かべながら聞いてくる。 「おっ男が欲しいとかじゃなくて、このままでいいのかなあって…」 ダイレクトな南野先輩の言い方に、なんとなく尻窄みになって答えたのは昨日の夜と同じ台詞。 「浩人と別れてから、中途半端な自分の仕事ぶりが嫌で仕事に打ち込みました…。」 浩人と別れたことを先輩に報告した日、あの時先輩に言った言葉は嘘じゃない。 なんでもきっちり仕事をこなす先輩と早く仕事を覚えようと必死になってる後輩。 それに比べて、いつ辞めてもいいやって思いながら適当に仕事をしていた自分を見て恥ずかしくなったのは事実。
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