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「はあ…。」
自己嫌悪と先輩の話の説得力に圧倒されて、ため息まじりの声が出た。
杏仁豆腐の最後の一口を噛み締めると、じんわりと咥内に甘みが広がる。
先輩の言う通りなのかもしれない。
恋愛と仕事、両方うまく同時進行できるほど器用でもないくせに両方求めてるんだ。
ようは、あれもこれもって欲張りだってことだよね。
「この2年、柚季穂は仕事を頑張ってきて目標としてたところまできたんじゃない?恋愛に目を向ける余裕がでてきたならそっちに少しくらい力入れても良いと思うよ。」
目標としていたところ…。
先輩のようになれているんだろうか?
胸を張って自分で目標を達成できたと言い切れるほどの自信はまだ無い。
「アンタが仕事できるのはみんな知ってるじゃない。噂されてるの知らないの?アンタがいれば私は安心して仕事辞めれるわよ。」
何も答えない私に痺れを切らしたのか、私の心を見透かすように言葉を続ける先輩。
その言葉に、じんっと胸が熱くなる。
「仕事辞めるなんてまだ言わないでください!先輩からまだまだ学ばなきゃ行けないこといっぱいあるんですから!」
「えー?もうないでしょ?さっ、仕事に戻るか!」
ふふっと二人で笑みを交わすと、いつの間にか私たちだけになっていた社員食堂を後にした。
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