眼前の怪異

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「怪物なんて、いるわけないじゃん。……夜の闇と犯人に対する恐怖で、見間違えたんじゃない?」 「だろうね」 やんちゃ坊主が、私に同調した。 「多分そうね。……まさか、家族の誰かが被害者と同じ目に遭わされるとは思わないけど、早く犯人が捕まって欲しいわ」 真摯(しんし)な口調で、母が言う。 「うん」 「だね」 「……明日は、バレボール全国大会地区予選、対旭(あさひ)高校戦。─―もう、寝る」 「おやすみ」 「おやすみー」 私は、居間を出て、濃い茶色の木製階段を登った。 この家は、杉並区の閑静な住宅街にたつ、築13年の一戸建て。 私の部屋は、2階なの。 「……これで良し、と」
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