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眼前の怪異
「……近所で起きた猟奇殺人事件。怖いわねぇ」
母が、とても強張った顔で言った。
「ほんと。─―ベッドで被害者の首を切り落として殺すなんて、異常よ!」
憎しみを込めた言葉を、私が紡ぐ。
私は、翠原倫(みどりはらりん)。杉並区にある女子高校の2年生。バレー部に所属する、普通の女の子。
居間でテレビを見ながらお茶していた母と弟に、シャワーを浴びた後、加わったの。
「殺された時、被害者は寝てたの?」
と、コーラのはいったグラスをガラステーブルに置いて、中3の弟。
「目を見開いて、亡くなってたそうよ」
渋面で、母が答える。
「うわ─―─―っ! 怖(こわ)っ! 首を切断されてから15秒くらいは、ものを見る事が出来るそうじゃん。被害者は、自分の首無し体(からだ)を見たかも」
「ちょっと! やめてよっ! 夜中、トイレに行けなくなるじゃん」
私は、恐怖で、少し落ち着きを失ってしまった。
「……犯人は人間じゃなくて怪物だって、目撃者は言ってるみたい」
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