美女の秘密

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*** 「おはようございます、栗山さん」 話しかけられた中年の男は新聞から目を離した。 「おお、佐川か。おはよう」 佐川はぴしりと頭を下げて、かけている眼鏡をくいっと上げた。相変わらず堅苦しいやつだ。殺人課には珍しい。栗山は苦笑して佐川に尋ねた。 「例の話聞いたか?」 今度は眉毛をぴくりと動かして、佐川はどの件でしょうか、と聞き返した。 「マンホールのやつだよ。あと数件の器物損壊」 ああ、と頷いて佐川が怪訝な顔をした。 「殺人課にも関係あるんですか?」 「いや、もちろんない。実は友人が役所勤めでな」 栗山はよっこらしょと椅子から腰を上げた。 「困ってるから何とかしてくれってさ」 最近、町中でマンホールが盗まれる事件が発生している。理由はわからないが、恐らくは密売目的だろうと見ている。 「鉄とか銅とか金目のもんはなんでも盗まれるらしいからなあ、最近は」 ***
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