11人が本棚に入れています
本棚に追加
***
「おはようございます、栗山さん」
話しかけられた中年の男は新聞から目を離した。
「おお、佐川か。おはよう」
佐川はぴしりと頭を下げて、かけている眼鏡をくいっと上げた。相変わらず堅苦しいやつだ。殺人課には珍しい。栗山は苦笑して佐川に尋ねた。
「例の話聞いたか?」
今度は眉毛をぴくりと動かして、佐川はどの件でしょうか、と聞き返した。
「マンホールのやつだよ。あと数件の器物損壊」
ああ、と頷いて佐川が怪訝な顔をした。
「殺人課にも関係あるんですか?」
「いや、もちろんない。実は友人が役所勤めでな」
栗山はよっこらしょと椅子から腰を上げた。
「困ってるから何とかしてくれってさ」
最近、町中でマンホールが盗まれる事件が発生している。理由はわからないが、恐らくは密売目的だろうと見ている。
「鉄とか銅とか金目のもんはなんでも盗まれるらしいからなあ、最近は」
***
最初のコメントを投稿しよう!