美女の秘密

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私は今、長年の悩みから解放されようとしている。 私の名前は円。まどか、だ。自慢じゃないが私は美人だ。だから今までかなり得をしてきたし、幸せだった。 幼稚園でも近所の公園でも、みんながちやほやしてくれた。私が可愛かったからだ。 小さいころからお饅頭とドーナツが大好きで、おばあちゃんによくねだっていた。老人というのは孫には甘いものだ。それが天使のように可愛い孫ならなおさら。あと水玉のワンピースがお気に入りで、これもおばあちゃんに買ってもらった。 だから満月を取ってくれと頼んで、無理だと言われたときは泣いた。あのまあるくて美味しそうな月が欲しいのに。どうして可愛い私の願いを聞いてくれないの、と。あれが人生唯一の叶わなかった望みかもしれない。 今思えばひどい女だが、そんな私にも悩みがあった。誰にも言えない、相談できない悩み。最後に聞いてほしい。
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