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そのときは気分が悪い、とごまかした。小さい子どもながらに、これは人に知られてはいけないことなんだと直感した。
それ以来、丸いものを凝視していると度々同じことが起こった。大抵は人に知られることなく、丸いものに食らいつくような格好で我に返ったけど、ごくたまに人前で危機に直面することがあった。
中学生のとき、満員電車で目の前に和菓子屋の広告が貼られていたときが試練だった。身動きが取れず、目をつぶってみたりしたが、一度その『発作』が始まると私にはどうしようもないのだ。丸い白い大福の広告が浮き上がってきて甘い香りを漂わせる。
どうやらこの甘い香り、食べ物の種類に関係はないらしい。砂糖の甘さとは違う独特の甘い匂い。こういうのをかぐわしい、というのかもしれない。
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