出発するふたり

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 俺はそう叫ばずにはいられなかった。いま正に我が妻となる加代が、純白のウエデングドレスではなく、頭に水中メガネを乗せて紺色のスクール水着で立っていたのである。足もとはサンダルで、腰の周りには浮き輪も忘れていなかった。  「……翔ちゃん、似合う?」  秋の涼しさを通り越して暖房を入れるまでもないくらいに冷えた控え室の中で、鳥肌を立てながら、慎ましく微笑んで加代はそう言った。  「そこまでやったら、ここは白いスクール水着だろ!?」  気が付けば籠の中の鳥とは正に俺のことだろう。
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