蜜月の檸檬

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 「爆発することのない爆弾を仕掛けて回るなんて、中学のクラスメイトだったって言う、下山香里って言う人はどんな人だったの?」  「起爆装置は完璧なのに、爆発物は付けられていなかったんだってな」  実際に爆弾事件ではあったけども、爆発は起きていないので、この事件による死傷者は存在していない。  その時、所轄の警察署から検察に移送される下山香里の顔がテレビに映った。  普通なら顔を隠すためにジャンバーなどを頭から被せられてしまいそうだが、下山香里はそんな事はせずに、背筋をぴんと伸ばし、その目は正面を捕らえている。  口元には少し笑みが見られた気がしたのは私の気のせいと言うわけではないだろう。  「どんな子だったかと言えば、いつも教室の窓際に座って、本ばかり読んでいた文学少女だったよ」   妻はそう、と一言だけ言うと、他の局で下山香里のニュースがやっていないかとチャンネルを変えていた。
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