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11.戦乱と無謀と転移なんてロクな事がない
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聖教国、聖都ガヴァナーから南…聖教国の中でも有数の商業都市であるブルスブレカ。
普段であればここで目にする商人達の活気に溢れた声と行き交う姿は見られず、代わりに闊歩するのは閃光騎士団と神聖魔術師団である。
街の外壁上から敵軍を眺める、閃光騎士団第六位ネヴァール=ワズカと、神聖魔術師団第四師団長グラフ=ウボシ。
ネヴァールは街の外を埋め尽くす帝国軍と魔軍に僅かに息を呑む。
「距離二千…まさかこの距離まで全く気付かずに攻め入られようとは───これが報告にあった転移…か。」
「安心したまえ、ワズカ殿。 我が第四魔術師団は有能な者が多い…ここは我々が出て、粉砕してくれる。」
「いや、しかしここは援軍を待つべきだ。 それまでは───我々は何とかここを死守すべきだろう。」
「ふん…臆病風に吹かれたか…?」
グラフはネヴァールを見下す様に鼻を鳴らし、自身の背後に立つ副官に手を挙げて何らかの指示を出す。
すぐさま副官は走り出し、それを横目で確認したグラフはネヴァールを見据えた。
「貴殿は街の住人と共にここで怯えて待っているがいい……私はここで敵軍を崩し、帰って来たら勝利の美酒でも頂くとするよ。」
グラフは吐き捨てる様な言葉と共に踵を返し、外門に向かって歩き出した。
「ま、待て! この場の指揮権は私にあるのだぞ!」
「その魔術の多様性から、我々神聖魔術師団は敵軍の動きに合わせた独断が認められている。」
去りゆくグラフの背中をネヴァールは悔しげに見詰め、強く拳を握りしめた。
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