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勝てる気のしない戦いがそこにはあり、その現実と向き合う恐怖に俺は走馬灯を見た。
浮かんでくるのはキーストンや、グランフォード騎士養成学校の“あの二人”の笑顔…そして何故だか不機嫌そうなシャーリィ。
それからこうやって、大男の背後から延髄に飛び蹴りをかましたリィン。
鈍い音と衝撃…大男は綺麗に入った蹴りに意識を刈り取られ、白目をむいて倒れ伏せる。
「あれ?」
走馬灯にしてはやけにリアルな光景に俺は首を傾げる。
「助けにきてくれたんだ……でも結局、ボクに助けられたね?」
悪戯を実行した瞬間の子供の様な笑みを携えながら、リィンが此方に歩み寄る。
「あ、ああ…ありがとう。 それより、捕まってたんじゃ?」
「きつく縛られて時間はかかったけど、ボクにかかれば縄抜けくらいたやすい事だよ。 …それより、シャーリィは?」
「えっ」
突然問われた言葉に、先程のシーンを思い返してみる。
大勢の盗賊達に囲まれる中、俺は大男から逃れる為に走り出して───
「…? どうしたの? 汗がすごいね…大丈夫?」
「いや、むしろ大丈夫かって問題は…」
「?? 何?」
俺の震える声にリィンは疑問符を浮かべ、可愛らしく小首を傾げた。
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