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◇
「───アストピア歴五百年、この修了証書を与え、貴君を本校の修了生とする。 …今後、貴君は我が国の為に尽力せよ。」
「はッ!」
生真面目な我が友人…キーストン=サルバートンが学長の激励に応え、気合いの篭った返事をしているのをぼんやりと眺める。
──このグランフォード国営騎士養成学校の修了式を受けるという事は、即ちこの国…グランフォード王国の騎士見習いの資格を得るという事で、つまりはある程度の将来を約束されている。
だが、現実…こんなところでいくら剣や武術を磨いたとしても、ここに居る大半の者はきっと戦争で紙くずの様に吹き飛ばされるただの役立たずとなる。
それは至極単純な話で、戦争の様な集団戦はまともに戦っても剣では魔術に対して圧倒的に不利だからだ。
まぁ個人的な決闘だとしても、余程接近していない限りは魔術師が有利なのは変わらないけど。
なんて、しょうもない事を考えているとキーストンが此方まで戻って来たので、その肩をポンと叩く。
「お疲れさん。見たかよ学長の熱の入った表情……流石、首席修了生は期待のされ方が違うな?」
「…はは、本来ならば僕以上の実力者である“魔術師殺し”の君が良く言うよ。 …君がその実力を知らしめるだけで、すぐにでも王宮騎士団にすら入れる───それでも君は、その道に進まないんだね?」
「ああ。俺はただ、最低限身を守れるだけの力を得られたらそれで良いんだ。」
半ば呆れ顔のキーストンに対し、肩を竦ませておどけて見せる。
そう。俺は国の為に生きて、国の為に死ぬ様な…そんな人生はごめんだ。
王宮騎士であった父親や、王国が誇る精霊魔術師団だったお袋の様に、戦争で死ぬなんて俺は絶対に───
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