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◇
余が余でいられる時は限りなく短い。
余の後ろに立つ男に、これから全てを奪われてしまうだろう。
守るべき民も、守るべき世界も、その全てを。
頭が霞がかった様に、何も考えられなくなる。
この鏡に映るのは、本当に余であるのか…それとも、それとも───
「皇帝…時間ですよ。 我ら帝国の全てをかけ、あの忌々しい聖女の国を───民を、全てを奪うのです。」
あざ笑う様な、表情だ。
聞いてはならぬ…分かっておっても、最早余に残された時間は───
「……そうだ、奪う。 余はこの世の全てを、奪う。」
「それでいい。」
そうだ、奪わねばならん。
今すぐアレを───魔術書を奪い、我が帝国は全ての支配者に。
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