ガルムと赤鬼

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「畜生! まだ追ってくるぞ」 「これぞ鬼ごっこだね!」 「言ってる場合かよ!」 「でもあいつ、走るのは遅いから逃げ切れるよ。きっと」  三島朱音は必死に走る天羽春樹にそういって微笑んで見せた。その天使のような笑顔の後ろでは、巨大な怪物がまさに鬼の形相で電柱をなぎ倒しながら迫ってきていた。  倒れた電柱が渋滞中の自動車に直撃すると、その周囲の車からワッと人々が飛び出してきた。 「む、無茶苦茶しやがるな」 「春ちゃん、まだ走れる?」 「もう少しは、大丈夫、だけどさ。あいつはちっとも、疲れてなさそうだぞ」  春樹が口で忙しく呼吸をしながらそう答える。 「私もちっとも疲れてないよ」 「……」 「春ちゃん最近うちの道場サボってゲームばっかりしてたからだよ」 「そうじゃなくても、お前の体力は異常なんだよ……。ん、どうした朱音」
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