天使のラッパは鳴り響く

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「どうだ、そっちは」 「ダメ。つながらない」 「やっぱりか。どうなってるんだよ」  警察、消防、自宅、どこに掛けても繋がらなかった。呼び出し音どころか、アナウンスすらも流れはしない。 「まずは朱音の家に行ってみようか」  春樹がそう提案しかけた時だった。  頭の中でジリジリとノイズのような音がした後で、再び何者かの声が頭の中に響き渡った。 『皆さん、逃げてください! この世界の仕様が改変されてしまいました。 多分……間もなくモンスターが世界中に出現します……。今は細かい説明をしている時間はありません、とにかく急いでなるべく頑丈な建物の中などに避難してください!』  今度は若い女の声だった。  前回とは違って、頭を抱えるほどの大音量ではなかった。  だが、その声色はひどく切迫しており、なおかつ困惑しているようでもあった。 「聞こえたか?」 「うん。……春ちゃんはどう思う?」 「実にバカバカしいな。けど、悪意があるようには思えなかった」 「モンスターがでるから頑丈な建物に避難して、だっけ」 「だったな。内容はさて置いても、建物内に避難するのは賛成だ」 「そうだね、なんだか町中普通じゃないし」    朱音は、道路にぎっしりと詰まっている自動車の渋滞を眺めながら眉をしかめた。 「どのみちこの様子じゃあ電車も動いてないだろうな。とりあえず学校にでも引き返してみるか?」 「そうだね。皆だったら何か知ってるかもしれないし、行ってみようよ」  二人は騒然とする町の中を、学校へと向かって走り始めた。
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